急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)の治療についての説明と同意書

急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)の治療についての説明と同意書について

手術・治療に入る前に100%安全といえる医療行為は存在しないという事は重々承知しております。私は心筋梗塞・狭心症で救急車で運ばれていきなり入院しましたが、このときも、確かに同意書に関する説明などをいただきました。しかし、自分自身はこの救急車で運ばれたときは、意識はあったものの、大変苦しい思いでいましたので、「もうチャッチャとサインするから早く手術進めてよ!」と言う感覚で内容なんてどうでもいいから!と思っていました。こちらで紹介するのはそのときの説明と同意書です。後から読むと、大変貴重な資料だとわかりました。

急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)の治療についての説明と同意書

急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)の治療についての説明と同意書

急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)とは

心臓は全身へ血液を送るためのポンプの役割を果たしています。ポンプ機能は主に心臓の左側にある左心室という筋肉(心筋)の壁に囲まれた部屋がその役割を担います。左心室の心筋が拡張すると左心房から血液が左心室へ送り込まれ、左心室の心筋が収縮することにより左心室に貯まった血液が大動脈へ送り出され全身へ血液が供給されます(図1)。左心室の心筋が収縮するためにも血液が必要です。心臓の周囲にはりついている冠動脈という血管から供給されます(図2)。急性冠症候群(図3)とはこの冠動脈が動脈硬化(プラーク形成)を起こし、プラーク(あぶらのかたまり)が破裂することで血栓(血のかたまり)が血管内に形成され、 心筋への血液の供給が途絶あるいは不十分になることにより起こる病気の総称で、急性心筋梗塞、 不安定狭心症に分類されます。

1)急性心筋梗塞
冠動脈にできたプラークが破裂すると、血栓が形成され冠動脈を閉塞します。これにより心筋への血液の供給がストップするため心筋が壊死してしまいます。心筋が壊死することにより心臓のポンプ機能は失われ、また、心臓が停止するような不整脈(脈の乱れ)が出現しやすくなります。急性心筋梗塞を発症した場合、病院到着前の致死率(命にかかわる確率)は3~4割に達し、病院到着後においても1割程度の致死率を有する重篤な病気です。急性心筋梗塞を疑った場合は抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を服用するとともに緊急冠動脈造影検査(冠動脈の血液の流れをみる検査)を行い、閉塞部位に対してバルーン(治療用の風船)、ステント (金属製の網目状のパイプ)などを使用したカテーテル治療(冠動脈インターベンション)を行います。カテーテル治療以外の治療としては薬物療法単独あるいは冠動脈バイパス術がありますが、薬物療法のみでは根本的な治療にはなりません。また、冠動脈バイパス術は手術までに時間がかかるため緊急を要する急性心筋梗塞の場合には適さない場合が多いです。

2)不安定狭心症
急性心筋梗塞と同様に冠動脈にできたプラークが破裂し、血栓が形成されることにより起こる病気です。急性心筋梗塞は冠動脈が閉塞することが多いのですが、不安定狭心症は冠動脈があぶらと血のかたまりで狭くなってはいますが完全には閉塞していな い状態です。急性心筋梗塞の一歩手前が不安定狭心症と言い換えることもできます。不安定狭心症が疑われた場合は抗血小板薬(血をサラサラにする薬)を服用するとともに緊急で冠動脈造影険査を行い、狭窄部位に対してペルーン、ステントなどを使用したカテーテル治療(冠動脈インターベンション)を行う場合もありますが、胸の痛みなどの症状が消失していれば薬物療法で1~3日程度安定したあとに冠動脈造影検査を行い、狭窄部位に対して冠動脈インターベンションを行うこともあります。カテー テル治療以外の治療としては薬物療法単独あるいは冠動脈バイパス術がありますが、 薬物療法のみでは根本的な治療にはなりません。また、冠動脈バイパス術は手術までに時間がかかるため緊急を要する場合には適さない場合もありますが、カテーテル治療が不可能な場合には選択される場合もあります。

3)急性冠症候群に似ている病気
急性冠症候群と同様の症状や検査所見を有しても冠動脈造影検査を行い、血管に動脈硬化性の狭窄がない場合には以下のような病気を疑います。それぞれの病気に応じた検査・治療を行っていきます。

Ⅰ.冠動脈のけいれんによる急性心筋梗塞・不安定狭心症
冠動脈のけいれんが原因で冠動脈の狭窄や閉塞をきたします。治療は薬物治療を行うことになります。

Ⅱ.タコつぼ型心筋症
高度なストレスなどが原因で心臓の筋肉の一部(とくに先端) が動かなくなる病気です。

Ⅲ.急性大動脈解離
大動脈は3層構造の壁からできていますが、壁の一部がはがれる病気です。重症な病気であり、場合によって緊急手術が必要になります。

Ⅳ.心筋炎・心膜炎
心臓の筋肉や心臓の膜の炎症です。重篤化すると命にかかわります。

Ⅴ.急性肺血栓塞栓症
肺の動脈に血栓(血のかたまり)が詰まる病気です。重症度によってはカテーテルによる血栓除去や血栓溶解療法(薬で血栓を溶かす治療)、下大静脈フィルター留置術などを行います。

□ 急性心筋梗塞・不安定狭心症に対するカテーテル検査(冠動脈造影検査)・カテーテル治療(冠動脈インターベンション)

冠動脈造影検査はカテーテルというプラスティックでできた細長い管を太ももの付け根、手首あるいは肘の動脈から心臓あるいは目的の動脈まで挿入し、造影剤というレントゲンに写る薬剤を心臓のまわりにはりついている冠動脈という血管や心臓の中あるいは目的の動脈へ注入することにより血管の状態や心臓の動きを調べたりする検査です。
冠動脈インターベンションは(図4・5)、このカテーテルを通して冠動脈(心臓の血管)の狭窄(せまいところ)や閉塞(つまっているところ)をバルーン(治療用の風船)、ステント(金属製の網目状のパイプ)を挿入し拡張する治療です。血栓の量が多いときには血栓吸引カテーテルいう特殊なカテーテルで血栓を吸引除去したり血栓溶解薬などにより血栓を溶かす治療も行うことがあります。

1)✓時間;約2時間~数時間(治療部位の状況により様々です)

2)✓カテーテルを挿入する部位(図6)
①✓太ももの付け根(大腿動脈)
利点は血管が太く、カテーテル自体は大腿動脈から入れるものとして作られているものが多く手技はしやすい。血管が太いため挿入部の血管損傷のリスクは少ない。欠点は出血した場合に大量の出血になる場合がときにあることと治療後はべッド上の安静を4時間程度必要とします。

②✓手首(橈骨動脈)
利点は血管が細いため出血のリスクが少なく、治療後は4時間程度の間、手首さえ動かさなければ歩いたりできることです。欠点は血管が細いため治療後に血管が閉塞する可能性があることと血管の蛇行や血管のけいれんによりカテーテルが心臓まで到達できないことが他の挿入部位に比べて多いことです。

③✓肘(上腕動脈)
利点は前腕動脈よりは血管が太く治療後の血管閉塞が少ないこと、大腿動脈より血管が細いため輸血を必要とするような大きな出血になることがほとんどないこと、治療後は肘さえ動かさなければトイレなどに歩くことができることです。欠点は血管の横に神経があるため腫入の際に神経を損傷するリスクがあることです。

④✓静脈(大腿静脈・頸静脈・肘静脈ほか)
治療によっては動脈以外に静脈からカテーテルを挿入することがあります。挿入部位は太ももの付け根、くび、ひじの静脈などです。

3)口 手順
挿入部位に局所麻酔を行います(意識はある状態です)。
シースという直径2-3mm前後のプラスティック製の管を血管の中へ挿入します。シースが血管内と体外をつないでいるため検査に必要な道具を出し入れすることができます。
カテーテルをシースから冠動脈内へ挿入し、検査・治療を行います。
冠動脈の入り口に挿入したカテーテルからガイドワイヤーという細い針金を目的の血管へ挿入します。このガイドワイヤーに沿ってバルーン(治療用の風船)やステント(金属製の網目状の管)をすすめ、狭窒・閉塞部を拡張します。
 血栓などが狭窒・閉塞部位にある場合には吸引カテーテルという管を使って血栓を吸引します。

4)✓その他特殊な状況下で使用する機器
①大動脈バルーンパンピング;血圧が低下(ショック状態)したときなどに使用。
②経皮的肺補助装置;心停止あるいはそれに近い状態に陥ったときに使用。
③人工呼吸器;心不全などにより呼吸状態が悪化した場合に使用。

5)✓起こりえる合併症、危険性
①カテーテルを挿入する部位の合併症
Ⅰ.出血;検査後はシースを血管から抜去します。血管には直径2-3mm前後の穴が開いた状態になるため圧迫による止血を行いますが、止血できずに出血する場合があります。輸血をする場合もあります(0.2%程度)。
Ⅱ.仮性動脈瘤;シース抜去後の出血が持続すると穿刺部に動脈瘤が形成されることがあります。放置すると破裂するため圧迫による再止血が必要になります。外科的手術が必要になることもあります。頻度は0.02%程度です。
Ⅲ.動静脈瘻:穿刺部で動脈と静脈に交通が形成される場合があります。外科的手術が必要になることもあります。頻度は0.1%程度です。
Ⅳ.感染・皮膚潰瘍など;穿刺部位が細菌感染により化膜したり圧迫後に皮膚に水疱や潰瘍が形成される場合があります。0.06~0.62%程度。

②薬物によるアレルギー
検査で使用する造影剤などの薬剤によりアレルギーが起こることがあります。症状としては蕁麻疹、発熱、嘔吐などがありますが、重症例ではショック(血圧の異常な低下)を来す場合があり心肺蘇生処置が必要になることもあります。ショックを来すようなアレルギーの頻度は0.1%程度です。

③賢機能障害
検査で使用する造影剤により腎機能が悪化する場合があります。高度になれば透析を行う場合もあります。元々腎機能障害を有する場合は前日からの点満を行うことでリスクを軽減させています。また、カテーテルを挿入する際に動脈壁のコレステロールのかたまりがはがれて腎臓まで流れて行くことにより腎機能が障害されることもあります。

④不整脈
バルーンやステント拡張時などに一時的に冠動脈の血流が妨げられるため脈の乱れがみられることがあります。ときに心拍数が200以上になるような命にかかわる不整脈が出現することもあり電気ショックを行う場合があります。反対に脈が高度に遅くなり一時的なペースメーカーカテーテルを右心室へ挿入することがあります。

⑤塞栓症
カテーテル内にできた血のかたまり、空気、血管壁のコレステロールのかたまりが血管に流れることにより、到達した先の臓器に閉塞症状が出現することがあります。たとえば脳血管を閉塞した場合は脳梗塞、心臓の冠動脈を閉塞した場合は心筋梗塞、下肢の動脈を閉塞した場合は下肢の血行不良を起こすことがあります。脳梗塞を起こす頻度はおおよそ0.1%程度です。

⑥心臓・血管の損傷
カテーテルの心臓・血管への挿入やバルーン・ステントなどによる冠動脈の拡張時に心臓・血管を損傷する場合があります(0.5%程度)。それにより心筋梗塞(0.05~0.17%程度)や大量の出血を来し生命にかかわる場合もあるため緊急手術が必要になる場合もあります。

⑦神経障害
とくに肘の動脈から検査を行う場合に起こることがあります。肘の動脈には神経が併走しています。穿刺する場合に神経が正確にどこにあるかを把握することはできませんので雰刺しているときにしびれがあった場合には検査を施行する医師に訴えていただくことが重要です。

⑧ショック
治療中には様々な理由で血圧が高度に低下しショック状態になることがあります。場合によっては昇圧剤や大動脈バルーンパンピング(大動脈内へ大きな風船を挿入し、拡張・収縮させることで心臓の負担が軽減する道具)や経皮的心肺補助装置(簡易型の人工心肺) を使用することがあります。

⑨血栓症
治療中に種々の原因により冠動脈内に血栓(血のかたまり)が出現し、冠動脈を閉塞する場合があります。カテーテルによる吸引を行ったりしますが大量の場合には閉塞が解除されずに心筋梗塞や生命にかかわるような危機的な状態に陥ることがあります。

⑩死亡
重度の心血管損傷、不整脈、脳梗塞などが原因でおこり得る。治療では0.1%程度(重篤な状態で治療を受ける方を含みます)。とくに急性心筋梗塞・不安定狭心症の重症例においては病気自体の悪化により検査・治療中に死亡することもあります。

⑪その他予期しえない合併症
上記合併症については治療をする上でできる限りそのリスクを減らすよう日々努めております。また、治療を受けないことによるリスク(狭心症や心筋梗塞が疑われ放置すれば生命に関わる可能性があります)が上記合併症を上回る場合に当該検査、治療をすすめております。

●●病院:循環器科_______説明医師:_______

私は急性心筋梗塞・不安定狭心症あるいはその疑いに対して冠動脈ステント留置術・形成術とそれに伴う必要な治療の必要性、その結果生じる利益と不利益(危険性)についての説明を受けました。また、上記説明文をよく読み疑問点については医師からの説明を受け納得しました。上記を了承の上で上記検査、治療を受けることを承諾するとともに、緊急時には担当医師の適切な判断にゆだねることを承諾します。

●●病院院長殿
2015年8月6日
患者氏名 _______ 印 ※署名があれば押印は不要
家族等氏名_______ 印 (患者との続柄: )
※患者の署名があれば家族等の署名は不要
※患者が署名不能な場合や未成年者の場合には家族の署名が必要

説明と同意書20150806_0

実際に貰った説明と同意書

例によって病院や個人を特定できる情報は消させて頂いております。

説明と同意書_20150806_1

説明と同意書_20150806_2

説明と同意書_20150806_3

説明と同意書_20150806_4

説明と同意書_20150806_5

説明と同意書_20150806_6

説明と同意書_20150806_7